最終更新: (相続税への加算条件と課税方式の説明を更新。教育資金特例は10月25日の確認内容を保持)
孫への生前贈与——相続税に加算される条件と、暦年課税・相続時精算課税の違い
孫への生前贈与が相続税の計算に加わるかは、「孫だから」「相続人ではないから」だけでは決まりません。祖父母から相続・遺贈などで何を受け取るか、贈与時の課税方式、相続開始日を分けて確認します。暦年課税の年110万円の基礎控除と、相続時精算課税の基礎控除は、相続時の扱いも異なります。この記事では加算の条件を整理し、教育資金特例の新規適用終了と、相談前に確認したい資料を案内します。
孫への贈与も、基本は「年110万円」まで非課税
贈与税の原則的な計算方法である暦年課税では、孫が1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁No.4402)。この110万円は「渡す人ごと」ではなく「もらう孫1人あたり・1年あたりの合計」で判定します。祖父から100万円、祖母から100万円を同じ年に受け取れば合計200万円となり、110万円を超えた分が課税対象です。
110万円を超える贈与でも、父母や祖父母(直系尊属)から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の孫が受けた場合は特例税率が使えます。たとえば500万円の贈与なら、110万円を差し引いた390万円に特例税率を適用して贈与税は48.5万円です(国税庁No.4408の計算例。390万円×15%−10万円=48.5万円)。贈与税額の目安は贈与税の計算や贈与税早見表で確認できます。
出典: 国税庁 No.4402「贈与税がかかる場合」、No.4408「贈与税の計算と税率」(令和8年4月1日現在法令等)。年初の年齢条件は国税庁の成年年齢引下げに伴う改正資料とも照合。取得日2026-10-27。
暦年贈与は、祖父母から相続等で財産を取得するかを確認
暦年課税の生前贈与加算は、亡くなった贈与者から相続・遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人について、対象期間内の暦年贈与を相続税の計算に加える仕組みです。相続人である子でも、孫でも、まず同じ贈与者からの財産取得の有無を確認します。
孫が相続・遺贈などによる財産も相続時精算課税の贈与財産も取得しない場合、その祖父母からの暦年贈与は、原則としてこの加算の対象になりません。一方、対象者に当たる場合は、年110万円以下で贈与税がかからなかった暦年贈与も、対象期間内なら原則として加算されます。贈与税が非課税だったことと、相続税の計算から外れることは別です。
2026年12月31日までに開始した相続では、対象期間は相続開始前3年以内です。2027年以降は段階的に延びます。一律に7年分を足すのではなく、相続開始日ごとの加算期間を確認してください。
出典: 国税庁 No.4161・No.4103参考「相続時精算課税と暦年課税の比較」(令和8年4月1日現在法令等)、贈与税・相続税の改正あらまし4頁。取得日2026-10-27。
遺贈・死亡保険金・代襲相続は「実際に受け取る財産」を確認
- 遺言による遺贈 — 孫が同じ祖父母から遺贈で財産を取得する場合は、暦年贈与加算の対象者になります。
- 死亡保険金 — 亡くなった祖父母が保険料を負担した部分など、相続・遺贈とみなされる財産を孫が受け取る場合を確認します。受取人に指定されただけ、保険金を受け取ったという情報だけでは扱いは決まりません。
- 代襲相続や養子縁組 — 孫が相続人になったという地位だけでなく、その祖父母から相続等によって財産を取得するかを確認します。
- 相続時精算課税に係る贈与 — 下の相続時精算課税の節で、選択後の贈与と、選択前の暦年贈与を分けて確認します。
国税庁No.4161には、一定の教育・結婚子育て資金の管理残額だけを取得した人について、暦年贈与加算の対象者から除く扱いもあります(相続時精算課税の適用者を除く)。「財産を受け取れば、すべての贈与が加算」とは限りません。保険金の課税関係はNo.4114・No.1750も確認。いずれも令和8年4月1日現在法令等、取得日2026-10-27。
相続時精算課税の贈与は、暦年贈与の期間制限とは別に扱う
孫でも要件を満たせば相続時精算課税を選択できます。贈与者ごとに選択し、選択した年以降、その贈与者からの贈与は暦年課税へ戻せません。その祖父母の遺産を別に受け取らない場合も、精算課税で取得した贈与財産について相続時の加算を確認します。
- 2024年以後に受けた贈与 — 年分ごとに、原則として贈与時の価額から精算課税の基礎控除を引いた残額を相続税の計算に加えます。年110万円の基礎控除は、同じ年に複数の特定贈与者から受けた場合、その贈与額に応じてあん分します。
- 2023年以前に受けた贈与 — この年110万円の基礎控除はありません。いつ制度を選んだかだけでなく、贈与を受けた年を分けて整理します。
- 累計2,500万円の特別控除 — 贈与税の計算上の控除です。この特別控除を使った額が、そのまま相続税の計算からも外れるわけではありません。
精算課税の対象贈与には、暦年課税の「相続開始前3〜7年」という期間制限を当てはめません。また、選択前に同じ祖父母から受けた暦年贈与は、別に加算対象期間を確認します。制度の要件や届出は相続時精算課税の解説をご覧ください。加算額があることと、相続税の納税・申告が必要になることは別の判断です。
出典: 国税庁 No.4103・No.4103参考・No.4152・No.4301(令和8年4月1日現在法令等)。贈与年ごとの扱い・暦年課税へ戻せないこと・相続財産を別に取得しない場合の扱いを確認。取得日2026-10-27。
教育資金の一括贈与特例は、新規適用が終了しています
教育資金の一括贈与に係る非課税特例は、2026年3月31日で新規適用が終了しました。同年4月1日以後の新規・追加拠出は対象外です。期限内に必要な手続を行い、この特例の適用を受けた資金には、契約終了まで非課税措置が引き続き適用されます。以前から教育資金管理契約を結んでいるだけで、期限後の追加拠出も対象になるわけではありません。
期限内に適用を受けた資金でも、贈与者の死亡時や契約終了時には課税される場合があります。残額等の扱いは国税庁の案内と契約先の金融機関で確認し、個別の税務判断は税理士にご相談ください。また、そもそも扶養義務者(祖父母など)が必要な都度支払う教育費・生活費は、通常は贈与税の対象になりません。非課税の枠全体は生前贈与の非課税枠はいくらまで?で整理しています。
出典: 国税庁 No.4510(令和8年4月1日現在法令等)、文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置に関するQ&A」令和8年4月版10〜11頁。新規適用終了と期限内適用分の継続を確認。取得日2026-10-25。
渡し方の基本は、子への贈与と同じ
孫への贈与でも、あとで「本当に贈与だったか」を証明できるよう、贈与のたびに合意し、贈与契約書を作り、振込など記録が残る形で渡すことが大切です。とくに孫が未成年の場合は親権者が関わります。祖父母が孫名義の口座を作って積み立てても、通帳や印鑑を祖父母が管理し、孫がその存在を知らない・使えないといった状態だと、「名義預金」とみなされ贈与と認められないことがあります。具体的な進め方は生前贈与のやり方・贈与契約書の書き方で解説しています。
なお、孫への贈与を「暦年」で続けるか「相続時精算課税」を使うか、あるいは何もしないかで、生前の贈与税と相続時の相続税を合わせた総額の目安は変わります。ご自身の条件で生前贈与シミュレーションを試したうえで、実際の判断は税理士にご確認ください(このシミュレーションは3案の総額の目安を並べるもので、どれが得かの断定はしません。孫への贈与の加算条件は上記のとおり別に確認が必要です)。
相談前に、贈与の記録と受け取る財産を整理する
贈与した祖父母ごとに、贈与を受けた年月日と金額、贈与契約書・振込記録、相続時精算課税の選択届や過去の申告控えをまとめます。あわせて遺言や遺産分割の資料、死亡保険金の受取内容と保険料負担者が分かる書類を確認すると、課税方式と財産取得を分けて相談しやすくなります。
個別の加算額・制度選択・申告の判断は税理士へ、一般的な制度や手続の確認は税務署へご相談ください。窓口を選ぶときは悩み別の相談先マップをご覧ください。
一次情報(出典)
暦年課税・相続時精算課税・保険金の下記国税庁資料は2026年10月27日に確認(令和8年4月1日現在法令等)。教育資金特例の国税庁No.4510・文部科学省Q&Aは2026年10月25日の確認内容を保持。改正パンフレットは現行資料との照合に使用:
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税) — 加算の対象は「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」・対象期間(3→7年)
- 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合 — 1年間の贈与合計が110万円以下なら贈与税はかからず申告不要
- 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) — 基礎控除110万円、直系尊属から贈与年の1月1日時点で18歳以上への特例税率、500万円→390万円×15%−10万円=48.5万円の計算例
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択 — 選択の単位、年次基礎控除、特別控除と相続時の扱い
- 国税庁 相続時精算課税と暦年課税の比較 — 贈与年による違い、複数贈与者の基礎控除のあん分
- 国税庁 No.4152 相続税の計算 — 精算課税の受贈者が相続・遺贈の財産を別に取得しない場合
- 国税庁 No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務 — 精算課税の贈与財産と相続税申告
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金 — 保険料負担者と死亡保険金の扱い
- 国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき — 被保険者・保険料負担者・受取人による課税関係
- 国税庁 贈与税・相続税の改正のあらまし(PDF) — 2023年作成。4頁の加算期間を現行No.4161と照合
- 国税庁 成年年齢の引下げに伴う贈与税・相続税の改正(PDF) — 2022年の改正資料。年初の年齢条件を現行No.4408と照合
- 国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税 — 新規適用終了と期限内適用分の継続(令和8年4月1日現在法令等、取得日2026年10月25日)
- 文部科学省 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置に関するQ&A(令和8年4月版、PDF) — 10〜11頁: 期限内の申告書受理・拠出と契約終了までの適用(取得日2026年10月25日)
よくある質問
- 孫への生前贈与は相続税の対象になりますか?
- 孫という続柄や相続人の地位だけでは決まりません。同じ祖父母から相続・遺贈などで財産を取得するか、贈与が暦年課税か相続時精算課税かを分けて確認します。暦年贈与の加算対象者には、相続時精算課税に係る贈与で財産を取得した人も含まれます。2026年12月31日までに開始した相続では、暦年贈与の加算対象期間は相続開始前3年以内です。精算課税の対象贈与には、この期間制限を当てはめません。加算があっても、納税・申告の要否は別に確認します。
- 孫への贈与は年間いくらまで非課税ですか?
- 暦年課税では、孫が1年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁No.4402)。110万円は孫1人あたり・1年あたりの合計で判定します。父母や祖父母(直系尊属)から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の孫が受けた贈与は、110万円を超えた部分に特例税率が適用されます(国税庁No.4408)。
- 孫の教育資金を一括贈与する特例は、今から新しく使えますか?
- 新規適用は2026年3月31日で終了しました。同年4月1日以後の新規・追加拠出は対象外です。期限内に必要な手続を行って適用を受けた資金には引き続き特例が適用されますが、贈与者の死亡時や契約終了時には課税される場合があります。残額等の扱いは国税庁の案内と契約先の金融機関で確認し、個別の税務判断は税理士にご相談ください。
- どんなときに孫も生前贈与加算の対象になりますか?
- 遺贈で財産を取得する場合や、祖父母が保険料を負担した死亡保険金など相続等とみなされる財産を受け取る場合は、暦年贈与加算の対象者に当たるかを確認します。代襲相続や養子縁組でも、相続人になったことだけでなく実際の財産取得を確認します。相続時精算課税の対象贈与は別計算で、2024年以後の贈与は年分ごとの基礎控除後の残額、2023年以前の贈与はこの基礎控除なしで扱います。教育資金等の特例には別の扱いがあるため、対象者・加算額・申告の判断は税理士へご確認ください。
生前贈与の全体像は生前贈与とは、加算の期間は生前贈与加算の7年ルール、非課税の枠は生前贈与の非課税枠はいくらまで?で解説しています。累計2,500万円の枠を使う制度は相続時精算課税とは、渡し方は生前贈与のやり方をどうぞ。贈与税額の目安は贈与税の計算、総額の比較は生前贈与シミュレーションで確認できます。