最終更新: (国税庁No.4103ほかに基づく)
相続時精算課税とは?——2500万円の特別控除と相続時の「持ち戻し」
相続時精算課税は、原則として贈与の年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円までの特別控除を使える制度です(国税庁No.4103)。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。ただし、控除を受けた財産は贈与者が亡くなったときに相続財産へ持ち戻して相続税を計算します。つまり「贈与税が完全になくなる」制度ではなく、税の負担を相続のときへ繰り延べる制度、という点が最大のポイントです。
「2500万円まで非課税」の正しい意味——課税の繰り延べ
相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与について累計2,500万円までは特別控除で贈与税がかかりません。ここだけを見ると「2,500万円まで非課税」に見えますが、正確には少し違います。この制度で贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産へ足し戻され(持ち戻し)、相続税の対象になるからです(国税庁No.4103)。
つまり、贈与の時点で贈与税を払わずに済む代わりに、最終的には相続税で精算されます。「贈与税」と「相続税」を通した全体の税負担が必ず軽くなるとは限らず、財産の額や相続人の構成、値上がり・値下がりの見込みなどによって、有利にも不利にもなり得ます。
出典: 国税庁 No.4103「相続時精算課税の選択」(令和7年4月1日現在法令等)。取得日2026-07-22。
制度のしくみ——特別控除2,500万円と一律20%
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特別控除の限度額 | 贈与者ごとに累計2,500万円まで(複数年にわたって使える) |
| 2,500万円を超えた部分 | 一律20%の贈与税 |
| 年110万円の基礎控除 | 令和6年新設。毎年110万円までは贈与税がかからず、相続時にも持ち戻されない |
| 相続時の扱い | 控除を受けた贈与財産(年110万円の基礎控除分を除く)を相続財産へ持ち戻して相続税を計算 |
特別控除は1年で使い切る必要はなく、複数年にわたって累計2,500万円に達するまで使えます。この枠を超えて贈与した部分には、金額にかかわらず一律20%の贈与税がかかります(暦年課税のように金額が大きいほど税率が上がる、という形ではありません)。
出典: 国税庁 No.4103(特別控除2,500万円・一律20%・年110万円の基礎控除)。取得日2026-07-22。
令和6年改正——年110万円の基礎控除が新設された
令和6年1月1日から、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設されました。毎年110万円までの贈与は贈与税がかからず、しかも相続時に相続財産へ持ち戻されません(国税庁No.4103)。これは2,500万円の特別控除とは別枠で、毎年使えます。
相続時に相続財産へ足し戻すのは、「年110万円の基礎控除を差し引いた残額」です(国税庁No.4103)。改正前は精算課税を選ぶと少額の贈与でも申告が必要でしたが、この基礎控除の新設で、年110万円以内なら申告も不要になりました。
出典: 国税庁 No.4103(年110万円の基礎控除、相続時に加算するのは基礎控除を控除した残額)。取得日2026-07-22。
暦年課税との違い——一度選ぶと戻れない
贈与税の課税方法には「暦年課税(年110万円の基礎控除)」と「相続時精算課税」があります。相続時精算課税を選ぶには税務署への届け出(選択届出書の提出)が必要で、いったん選択すると、その贈与者からの贈与は以後すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません(国税庁No.4103)。
この「戻れない」という性質があるため、選択は慎重な判断が必要です。どちらの課税方法が向いているかは、財産の額・種類、相続人の構成、贈与を続けられる年数などによって変わります。金額の目安を並べて比べたいときは、下のシミュレーターが使えます。
出典: 国税庁 No.4103(選択後は暦年課税へ変更できない旨)。取得日2026-07-22。
どちらが有利かは前提しだいで変わります。相続時精算課税と暦年課税のどちらが向いているかは、財産の額・種類・相続人の構成・贈与できる年数などによって逆転することがあります。本ページは制度の一般的な解説で、個別の有利・不利の判断や申告書の作成は行いません。実際の選択は税理士・税務署にご確認ください。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月22日):
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択 — 適用対象者(贈与者60歳以上の父母・祖父母、受贈者18歳以上の子・孫)、特別控除2,500万円・一律20%、年110万円の基礎控除、相続時に加算するのは基礎控除を控除した残額、選択後は暦年課税へ変更できない旨
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税) — 暦年課税の生前贈与加算(精算課税との扱いの違いの根拠)
よくある質問
- 相続時精算課税とは何ですか?
- 原則として贈与の年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円までの特別控除を使える制度です。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。ただし贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産へ持ち戻して相続税を計算するため、非課税ではなく課税の繰り延べにあたります(国税庁No.4103)。
- 2,500万円まで本当に贈与税がかからないのですか?
- 特別控除の枠内(累計2,500万円まで)であれば、贈与時の贈与税は0円です。ただしこの枠を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。また、控除を受けた財産は相続時に相続財産へ持ち戻されて相続税の対象になります。その場の贈与税がかからないだけで、税負担がなくなるわけではない点に注意が必要です(国税庁No.4103)。
- 令和6年の改正で何が変わりましたか?
- 令和6年1月1日から、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設されました。毎年110万円までの部分は贈与税がかからず、しかも相続時に相続財産へ持ち戻されません。2,500万円の特別控除とは別枠です(国税庁No.4103)。
- 一度選んだら暦年課税に戻せますか?
- 戻せません。相続時精算課税をいったん選択すると、その贈与者からの贈与は以後すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。選択は慎重な判断が必要で、具体的な有利・不利はご事情により変わるため税理士へご相談ください(国税庁No.4103)。
生前贈与の全体像は生前贈与とは、非課税の枠は生前贈与の非課税枠はいくらまで?で解説しています。暦年課税で贈与した分が相続税に足し戻される生前贈与加算の7年ルールもあわせてどうぞ。単年の贈与税額の目安は贈与税の計算、暦年贈与・精算課税・何もしない場合の総額比較は生前贈与シミュレーターで確認できます。