最終更新: (国税庁の令和7年4月1日現在法令等に基づく)
生前贈与とは?——相続税との関係・110万円の非課税枠・7年加算をわかりやすく
生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、その財産を無償で他の人へ渡すことです。相続財産を減らして将来の相続税を抑える目的でよく使われますが、渡し方によっては贈与税がかかり、相続開始前3〜7年の贈与は相続税に足し戻されます(生前贈与加算)。この記事では、生前贈与と相続税の関係、年110万円の非課税枠の意味、暦年課税と相続時精算課税の違い、7年ルールまでを、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。「贈与すれば必ず得」ではないという点が出発点です。
生前贈与とは——「生きているうちに」財産を渡すこと
生前贈与とは、財産を持つ人(贈与者)が生きているうちに、その財産を無償で別の人(受贈者)へ渡すことをいいます。亡くなってから財産が移る「相続」に対して、生きているうちに渡すのが生前贈与です。渡す相手は、子・孫・配偶者など誰でもかまいません。
財産を受け取った側には、その額に応じて贈与税がかかることがあります。贈与税は相続税を補完する税で、生前に財産を移すことで相続税だけを不当に軽くできないよう、相続税より高めの税率設定になっているのが一般的です。だからこそ、生前贈与は「非課税で渡せる枠」や「相続税との足し戻し」のルールを理解したうえで考える必要があります。
なぜ相続税対策として使われるのか(そして「必ず得」ではない理由)
相続税は、亡くなったときに残っていた財産(遺産総額)に対してかかります。生前に財産の一部を子や孫へ渡しておけば、その分だけ相続時の遺産総額が減り、相続税が下がる方向に働きます。これが生前贈与が相続税対策として使われる理由です。
ただし、渡し方によっては贈与税がかかり、相続開始前の一定期間(3〜7年)の贈与は相続税に足し戻されます(生前贈与加算)。贈与税の負担が相続税の軽減を上回れば、全体の負担はかえって増えることもあります。「生前贈与をすれば必ず得」とは言えず、有利かどうかは金額・年数・相続の開始時期・財産の内容で変わります。当サイトの生前贈与シミュレーションでは、「暦年贈与を続ける」「相続時精算課税を選ぶ」「何もしない」の3案の総額の目安を並べて確認できます(どれが得かの断定はしません)。
年110万円の非課税枠(暦年課税)とは
贈与税のもっとも基本的な計算方法が暦年課税です。1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残りに税率を掛けて計算します。したがって、1年間に受けた贈与が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁No.4402・No.4408)。
この110万円は「渡す人ごと」ではなく「受け取る人ごとの合計」で判定します。たとえば子が父から100万円、母から100万円を同じ年に受け取れば、合計200万円のうち110万円を超える90万円が課税の対象です。贈与税額そのものの目安は贈与税の計算や贈与税早見表で確認できます。
出典: 国税庁 No.4402「贈与税がかかる場合」、No.4408「贈与税の計算と税率」(令和7年4月1日現在法令等)。取得日2026-07-22。
「7年加算」——相続開始前の贈与は相続税に足し戻される
暦年課税で気をつけたいのが生前贈与加算です。相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人が亡くなる前の一定期間内に暦年課税で贈与を受けていた場合、その贈与財産は相続税の計算に足し戻されます。令和6年の改正で、この期間が3年から7年へ段階的に延長されました(国税庁No.4161)。
| 相続の開始時期 | 加算の対象期間 |
|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日まで(徐々に延長) |
| 令和13年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
延長された4年分(相続開始前3年より前〜7年以内)には、その財産の合計から総額100万円までは加算しない緩和措置があります。加算された分についてすでに納めた贈与税があれば、相続税から差し引かれます。仕組みの詳しい解説は生前贈与加算の「7年ルール」をご覧ください。
出典: 国税庁 No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(令和7年4月1日現在法令等)。令和6年1月1日以後の贈与から新ルールが適用されます。取得日2026-07-22。
もう一つの選択肢——相続時精算課税とは
暦年課税のほかに、一定の親子・祖父母孫の間で選べるのが相続時精算課税です。令和6年から年110万円の基礎控除が設けられ、それを超える贈与には特別控除(累計2,500万円)を充て、超えた部分に一律20%の贈与税がかかります(国税庁No.4103)。贈与した財産は相続時にまとめて精算(相続税で計算)しますが、年110万円の基礎控除部分は相続財産に持ち戻されません。
相続時精算課税は一度選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税へは戻せません。少額でも申告が必要になるなど、金額に表れない制約もあります。どちらの制度が向くかは財産額・年数・相続時期で変わるため、制度の中身を理解したうえで検討することが大切です。相続時精算課税の計算の目安は贈与税の計算でも確認できます。
出典: 国税庁 No.4103「相続時精算課税の選択」(令和7年4月1日現在法令等)。取得日2026-07-22。
数字で見る——3案を総額で並べると(一例)
たとえば遺産総額1億5,000万円・相続人が配偶者と子2人のケースで、子へ年110万円を10年間贈与する場合(生前贈与加算7年・特例税率)を当サイトのシミュレーションで試算すると、生前の贈与税と相続時の相続税を合わせた総額の目安は次のように並びます。
| 案 | 生前の贈与税(累計) | 相続時の相続税(目安) | 総額(目安) |
|---|---|---|---|
| ① 暦年贈与を続ける | 0円 | 7,048,750円 | 7,048,750円 |
| ② 相続時精算課税 | 0円 | 6,462,500円 | 6,462,500円 |
| ③ 何もしない | 0円 | 7,475,000円 | 7,475,000円 |
この例では3案を並べているだけで、金額の大小は有利・不利の結論ではありません。年間の贈与額が110万円を大きく超えると暦年贈与の贈与税負担が増え、「何もしない」より総額が大きくなることもあります。前提が少し変わるだけで順位は入れ替わるため、ご自身の条件で生前贈与シミュレーションを試したうえで、実際の判断は税理士にご確認ください。
上記の金額は当サイトの計算エンジンによる概算・目安(国税庁の速算表 No.4152/4155・No.4408・No.4103・No.4161に基づく)。相続税は「配偶者は法定相続分を取得・税額軽減をフル適用」と仮定。取得日2026-07-22。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月22日 / 令和7年4月1日現在法令等):
- 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合 — 1年間の贈与が110万円以下なら贈与税はかからず申告不要
- 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) — 基礎控除110万円・一般税率・特例税率
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税) — 生前贈与加算の対象期間(3→7年)・延長4年分の総額100万円控除
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択 — 年110万円の基礎控除・特別控除2,500万円・超過分一律20%・相続時の持ち戻し
- 国税庁 No.4152 相続税の計算 / No.4155 相続税の税率 — 相続税の計算・速算表
よくある質問
- 生前贈与とは何ですか?
- 生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、その財産を無償で他の人へ渡すことをいいます。亡くなってから財産が移る相続に対して、生きているうちに渡す点が違います。渡した財産の額に応じて、受け取った側に贈与税がかかることがあります。相続財産を生前に減らしておくことで、将来の相続税を抑える目的で使われることがありますが、年110万円の非課税枠や、相続開始前の一定期間の贈与を相続税に足し戻す生前贈与加算など、知っておくべきルールがあります。
- 生前贈与をすると相続税は安くなりますか?
- 必ず安くなるとは限りません。生前贈与で相続財産が減れば相続税は下がる方向に働きますが、贈与のしかたによっては贈与税の負担が生じ、相続開始前3〜7年の贈与は相続税に足し戻されるため(生前贈与加算)、かえって全体の負担が増えることもあります。有利かどうかは、贈与額・年数・相続の開始時期・財産の内容・相続人の構成などで変わり、一概には言えません。判断は税理士にご相談ください。
- 生前贈与は年間いくらまで非課税ですか?
- 暦年課税では、1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計が110万円以下なら贈与税はかかりません(基礎控除110万円、国税庁No.4402・No.4408)。これは受け取る人1人あたりの合計で判定します。ただし相続開始前の一定期間(3〜7年)に受けた贈与は、110万円以下であっても相続税の計算に足し戻されることがあります(生前贈与加算、No.4161)。相続時精算課税を選んだ場合は、別に年110万円の基礎控除があります。
- 暦年課税と相続時精算課税はどちらを選べばよいですか?
- 一概には決まりません。暦年課税は毎年110万円まで非課税で使いやすい一方、相続開始前3〜7年の贈与は相続税に足し戻されます。相続時精算課税は年110万円の基礎控除部分は相続財産に持ち戻されず、それを超える分は相続時にまとめて精算しますが、一度選ぶと暦年課税に戻せないなどの制約があります。どちらが有利かは財産額・年数・相続時期で変わるため、当サイトの生前贈与シミュレーションで総額の目安を並べて確認したうえで、実際の選択は税理士にご相談ください。
3案の総額の目安を並べて比べるなら生前贈与シミュレーション、7年加算のくわしい仕組みは生前贈与加算の「7年ルール」で解説しています。贈与税額そのものの目安は贈与税の計算、不動産を贈与するときの評価は相続税の土地の評価とは、相続税全体の目安は相続税計算シミュレーターでどうぞ。