最終更新: (国税庁の令和7年4月1日現在法令等に基づく)
生前贈与加算の「7年ルール」——令和6年改正のポイント
結論として、被相続人が亡くなる前の一定期間内に受けた暦年課税の贈与は相続税に持ち戻されます(生前贈与加算)。令和6年の改正で、その期間が3年から7年へ段階的に延長されました。延長分には総額1,000,000円までの緩和措置があります。生前贈与を考えるうえで外せないルールです。
なぜ贈与が相続税に足し戻されるのか
相続の直前に財産を贈与すれば、その分だけ相続財産が減って相続税を減らせてしまいます。これを防ぐため、一定期間内の贈与は相続財産に加算して相続税を計算します。これが生前贈与加算です。対象は暦年課税で贈与を受けた財産で、加算した分についてすでに納めた贈与税があれば、相続税から差し引かれます(国税庁 No.4161)。
加算期間は3年→7年へ(段階的に延長)
| 相続の開始時期 | 加算の対象期間 |
|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日まで(徐々に延長) |
| 令和13年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
出典: 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(令和7年4月1日現在法令等)。令和6年1月1日以後の贈与から新ルールが適用されます。
延長された4年分は総額1,000,000円まで加算しない
加算期間の延長で不利になりすぎないよう、緩和措置があります。相続開始前3年より前〜7年以内(延長された4年分)に受けた贈与については、その財産の贈与時の価額の合計から総額1,000,000円までは相続税の課税価格に加算しません。相続開始前3年以内の贈与には、この1,000,000円控除は適用されません。
相続時精算課税の年110万円は持ち戻されない
令和6年から相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設され、この年110万円以下の部分は相続財産に持ち戻されません。暦年課税の生前贈与加算とは扱いが異なるため、どちらの制度を使うかは加算ルールもふまえて検討する必要があります。制度の選択は要件・撤回不可などの注意点があるため、具体的な検討は税理士へご相談ください。
いま相続が起きたら、いつの贈与まで遡るのか——時点を当てはめて読む
上の表を「今日」に引きつけて読むと、次のようになります(2026年8月時点)。
- 2026年(令和8年)中に開始した相続では、加算対象は従来と同じ「相続開始前3年以内」の贈与だけです。7年ルールの影響はまだ表面化していません。
- 令和9年以降に開始する相続では、遡る起点が「令和6年1月1日」に固定されたまま相続の日だけが先へ進むため、加算対象期間が3年から少しずつ延びていきます。まるごと7年遡るのは令和13年1月1日以後に開始した相続からです。
- 言い換えると、令和5年以前の贈与が7年ルールで掘り起こされることはありません。延長の効果はあくまで令和6年1月1日以後の贈与に対して、これから徐々に現れます。
生前贈与加算でつまずきやすい3つの誤解
- 「年110万円以下なら持ち戻されない」ではない——加算対象期間内の贈与は、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算されます。基礎控除110万円以下で申告不要だった贈与も対象です(国税庁 No.4161、取得日2026年8月27日)。110万円の枠は贈与税の計算の話で、生前贈与加算とは別のルールです。
- 「孫への贈与も一律に持ち戻される」ではない——加算の対象になるのは、相続や遺贈などでその相続の財産を取得した人への贈与です。相続人でない孫は、遺贈や死亡保険金の受け取りなどがなければ原則として対象外です。詳しくは孫への生前贈与の解説で扱っています。
- 「緩和の100万円は毎年使える」ではない——延長された4年分の贈与から差し引ける100万円は、年ごとではなく、その期間の贈与の合計に対する総額です。4年間で最大100万円と読むのが正しい理解です。
当てはめ例——令和10年6月に相続が開始したとすると
経過措置の期間はことばで読むより、具体的な時点を置いたほうがつかみやすくなります。この条件のときの整理は次のとおりです。
- 加算の対象になるのは、起点の令和6年1月1日から相続開始の日までに受けた暦年課税の贈与です。この例では4年半ほどの期間が対象になります。
- そのうち相続開始前3年以内(令和7年6月から相続開始日まで)の贈与は、全額がそのまま加算されます。
- それより前、つまり令和6年1月1日から令和7年6月ごろまでの贈与は「延長で加わった部分」なので、合計から総額100万円を差し引いた残りが加算されます。
暦年課税と相続時精算課税——「持ち戻し」の性格がまるで違う
- 暦年課税の加算は「期間で区切る」方式です。対象は相続開始前の最長7年分に限られ、それより古い贈与は何十年前のものでも持ち戻されません。
- 相続時精算課税は「期間の区切りがない」方式です。制度を選んでから受けた贈与は、年110万円の基礎控除以下の部分を除き、何年前のものでもすべて相続税の計算に戻ってきます。
- どちらの方式でも、持ち戻される金額は贈与を受けたときの価額です。その後に値動きがあっても、加算の計算では贈与時の価額が使われます(国税庁 No.4161)。
- 「7年経てば消える」暦年課税と「ずっと残る」精算課税という違いは、どちらの制度で贈与するかを考えるときの前提になる部分です。どちらが合うかは状況によるため、この記事では断定せず、仕組みの違いとして示すにとどめます。
7年分さかのぼれるように——記録が実務の土台になる
- 加算期間が7年へ延びるということは、相続税の申告の際に最長7年分の贈与をさかのぼって確認する場面が増えるということでもあります。いつ・誰へ・いくら渡したかが後から追えるかどうかが、申告の手間を大きく左右します。
- 振込の記録や贈与契約書のように日付と金額が残る形にしておくと、加算対象期間の内か外か、緩和措置の対象かどうかの整理がしやすくなります。
- 過去の贈与の扱いに迷う場合や、記録が残っていない贈与がある場合の判断は個別性が高いため、税理士・税務署への相談が確実です。
加算があると相続税の計算はどこから変わるか
持ち戻しは税額の上乗せとして直接効くだけでなく、もっと手前の「そもそも課税されるか」の判定から効いてきます。加算された贈与財産は相続税の課税価格に足されるため、遺産そのものは基礎控除の内側でも、持ち戻し分を足すと基礎控除を超えて申告が必要になる、という順序が起こりえます。
概算を試すときは、相続税計算シミュレーションの遺産総額に加算対象になりそうな贈与額を足して入力すると、この条件のときの目安が確認できます。なお加算した贈与についてすでに納めた贈与税は相続税から差し引かれるので、同じ財産に二重に課税されるわけではありません(国税庁 No.4161)。
贈与税額の目安は贈与税の計算や贈与税早見表で確認できます。相続税の基礎控除は相続税はいくらから?もあわせてどうぞ。