最終更新: (全国銀行協会・法務省の公表資料に基づく)
預貯金の相続手続き——口座凍結から払い戻しまでの流れと必要書類・仮払い制度
「親が亡くなった。銀行の預金はどうやって受け継ぐの?」——結論から言うと、亡くなった方の預貯金は、金融機関に相続を連絡すると口座の取引が制限(凍結)され、その後、遺言や遺産分割協議書の有無に応じた必要書類をそろえて払い戻し・名義変更を行います。葬儀費用などで急いでお金が必要なときは、遺産分割が終わる前でも一定額を引き出せる仮払い制度(2019年開始)もあります。この記事では、口座凍結から払い戻しまでの流れ、ケース別の必要書類、仮払い制度のしくみを、全国銀行協会と法務省の資料にもとづいて整理します。
結論——「連絡で凍結 → 書類をそろえる → 払い戻し」の3ステップ
預貯金の相続手続きは、大きく①金融機関へ連絡(口座が凍結される)→②相続の状況に応じた必要書類をそろえる→③書類を提出して払い戻し・名義変更を受けるという流れです。必要書類は、遺言書があるか、遺産分割協議書があるかによって変わります。急ぎの資金は、後述の仮払い制度で一部を先に引き出すこともできます。
出典: 全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」「預金相続の手続に必要な書類」/ 法務省「遺産分割前の相続預貯金の払戻し制度」(民法909条の2)。取得日2026-07-23。手続きや必要書類は金融機関により異なる場合があります。
STEP1〜4——払い戻しまでの流れ
- STEP1 手続きの申し出(口座が凍結される) — 口座名義人が亡くなったことを金融機関に連絡します。相続の連絡と同時に、亡くなった方の口座での取引(入出金など)は原則として制限されます。これが「口座凍結」と呼ばれるものです。死亡と同時に自動で止まるのではなく、金融機関が相続を把握した時点で制限されます。
- STEP2 必要書類の準備 — 金融機関から、相続の状況(遺言・遺産分割協議書の有無など)に応じた必要書類の案内を受け、戸籍謄本や印鑑証明書などをそろえます。
- STEP3 書類の提出 — そろえた書類に、金融機関所定の相続手続書類を添え、相続人の署名・捺印をして提出します。
- STEP4 払い戻し等の手続き — 書類の提出後、金融機関で払い戻しや名義変更などの手続きが行われます。
出典: 全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」。取得日2026-07-23。区分には、上記のほか家庭裁判所の調停調書・審判書がある場合も含まれます。
ケース別・必要書類の一覧
払い戻しに必要な書類は、遺言書があるか、遺産分割協議書があるかで変わります。下の表は全国銀行協会が示す主なケースの必要書類です(金融機関により異なる場合があります)。
| 必要書類 | 遺言書がある | 遺産分割協議書がある | どちらもない |
|---|---|---|---|
| 遺言書 | ○(公正証書以外は検認調書・検認済証明書も) | — | — |
| 遺産分割協議書 (相続人全員の署名・捺印) | — | ○ | — |
| 被相続人の戸籍・除籍謄本 | ○(死亡が確認できるもの) | ○(出生〜死亡の連続したもの) | ○(出生〜死亡の連続したもの) |
| 相続人全員の戸籍謄本 | — | ○ | ○ |
| 印鑑証明書 | 預金を相続する方(遺言執行者がいればその方) | 相続人全員 | 相続人全員 |
| 通帳・証書・キャッシュカード等 | ○(あるもの) | ○(あるもの) | ○(あるもの) |
遺言執行者が裁判所で選任されている場合は、その選任審判書謄本も必要です。表の「○」は原則必要、「—」は原則不要の目安で、実際の書類は金融機関の案内に従ってください。金融機関所定の相続手続依頼書には、相続人の署名・捺印が必要です。
出典: 全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」。取得日2026-07-23。不動産(相続登記)の必要書類は相続登記の必要書類を参照。
預貯金の分け方——遺言・協議・法定相続分
複数の相続人がいる場合、預貯金をどう分けるかは次の順で決まります。
- 遺言書がある場合 — 原則として遺言の内容に従って分けます。
- 遺言書がない場合 — 相続人全員の遺産分割協議で分け方を決め、遺産分割協議書にまとめます。預金を誰がいくら取得するかを記載しておくと、金融機関での手続きがスムーズです。
- 話し合いの目安 — 分け方の基準になるのが、民法で定められた法定相続分です(配偶者と子なら各2分の1など)。必ずこの割合で分ける義務はありませんが、協議の出発点になります。
なお、亡くなった方の名義でなくても、実質的に亡くなった方の預金だったもの(名義預金)は相続財産に含まれます。分け方や相続税を考えるときは、こうした預金も見落とさないよう注意しましょう。
急ぎのとき——遺産分割前の払戻し(仮払い)制度
口座が凍結されると、遺産分割が終わるまで原則としてお金を引き出せません。しかし、葬儀費用や当面の生活費など、急いで資金が必要なこともあります。そこで2019年7月から、遺産分割前でも各相続人が単独で一定額を払い戻せる制度(民法909条の2)が設けられました。
各相続人が単独で払い戻せる額は、預貯金の口座ごとに、次の式で計算します。
| 単独で払い戻せる額 | 相続開始時の預貯金の額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分 |
|---|---|
| 同一の金融機関からの上限 | 150万円(法務省令で定める額) |
つまり、複数の口座があっても、同じ金融機関からの払い戻しは合計150万円までが上限です。他の相続人の同意がなくても、この範囲であれば単独で払い戻しを受けられます。利用には所定の書類(被相続人の戸籍、相続人の戸籍・印鑑証明書など)が必要で、金融機関により取扱いが異なるため、事前に確認してください。
出典: 法務省「遺産分割前の相続預貯金の払戻し制度」(民法909条の2、上限は法務省令で定める額=150万円)/ 全国銀行協会。取得日2026-07-23。実際に払い戻せる額・手続きは金融機関にご確認ください。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月23日):
- 全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」 — 連絡と同時に口座の取引が制限、書類提出後に払戻し
- 全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」 — 遺言書がある場合/遺産分割協議書がある場合/どちらもない場合の必要書類
- 法務省「遺産分割前の相続預貯金の払戻し制度」(民法909条の2) — 相続開始時の預貯金額×3分の1×法定相続分、同一金融機関の上限150万円
- 全国銀行協会「亡くなった親の預貯金、すぐに引き出すことは可能ですか?」 — 遺産分割前の払戻し制度の概要
よくある質問
- 亡くなった人の銀行口座はいつ凍結されますか?
- 口座名義人が亡くなったことを金融機関に連絡すると、そのお客さまの口座での取引(入出金など)は原則として制限されます(いわゆる口座凍結)。死亡と同時に自動で止まるわけではなく、金融機関が相続を把握した時点で制限されるのが一般的です。凍結後は、相続の手続きを経てからでないと払い戻しや名義変更ができなくなります(全国銀行協会)。
- 預貯金の相続手続きに必要な書類は何ですか?
- 必要書類は、遺言書や遺産分割協議書の有無によって変わります。遺言書がある場合は遺言書・被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本・預金を相続する方の印鑑証明書など、遺産分割協議書がある場合は協議書(相続人全員の署名捺印)・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書などが必要です。どちらもない場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍・相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書が必要になります(全国銀行協会)。
- 遺産分割が終わる前でも、亡くなった親の預金を引き出せますか?
- 2019年7月に始まった遺産分割前の払戻し(仮払い)制度を使えば、各相続人が単独で一定額まで引き出せます。引き出せる額は、口座ごとに「相続開始時の預貯金額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分」で計算し、同一の金融機関からは合計150万円が上限です(民法909条の2)。葬儀費用や当面の生活費などに対応するための制度で、利用には所定の書類が必要です。
- 預貯金はどのように分けますか?
- 遺言書があれば原則としてその内容に従います。遺言書がなければ、相続人全員の遺産分割協議で分け方を決めます。話し合いがまとまらない場合の目安になるのが、民法で定められた法定相続分です。預貯金を複数の相続人で分ける場合は、遺産分割協議書に預金の分け方を記載し、それにもとづいて金融機関で払い戻し・分配の手続きを行うのが一般的です。
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