最終更新: (法務局・法務省・国税庁の公表資料にもとづく)
相続登記を自分でやる手順——不動産・相続人の確認から法務局への申請まで
相続登記の申請は、相続人本人が自分で行うこともできます。法務局が申請書の様式や記載例を公開しているため、必要書類をそろえれば専門家に依頼せずに申請することが可能です。この記事では、「何から手をつければいいのか分からない」という方に向けて、不動産と相続人の確認 → 必要書類の準備 → 登記申請書の作成 → 登録免許税の計算 → 法務局への申請という一連の流れを、順番に解説します。あわせて、自分で進めやすいケースと、司法書士に頼んだ方が安心なケースも整理します。
結論——本人申請は可能。「不動産の確認 → 相続人の確定 → 書類 → 申請」の順で進める
相続登記は、法務局の様式・記載例を使えば自分で申請できます。進め方の骨組みは、①相続する不動産を確認する、②戸籍を集めて相続人を確定する、③遺言・遺産分割協議・法定相続分のどれで登記するかを決める、④必要書類をそろえる、⑤登記申請書を作る、⑥登録免許税(固定資産税評価額 × 0.4%)を計算・納付する、⑦不動産の所在地を管轄する法務局へ申請する、という順番です。まずは全体像をつかんでから、一つずつ進めましょう。
出典: 法務局「不動産登記の申請書様式について」/ 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」。取得日2026-07-23。本ページは一般的な手続きの流れの解説で、個別の申請の可否や進め方はケースにより異なります。
STEP1: 相続する不動産を確認する
最初に、名義変更の対象となる不動産を正確に把握します。登記は地番・家屋番号で特定するため、住所(住居表示)だけでは足りないことがあります。登記事項証明書で現在の名義や不動産の表示を確認し、固定資産課税明細書(毎年4月ごろに市区町村から届く固定資産税の通知に付属)や名寄帳で、被相続人が持っていた不動産の抜け漏れがないかを確認します。私道やマンションの敷地権など、見落としやすい不動産がないかも、この段階でチェックしておきましょう。
登記事項証明書は法務局(登記所)やオンラインで、名寄帳は不動産の所在地の市区町村で確認できます。取得日2026-07-23。
STEP2: 戸籍を集めて相続人を確定する
次に、誰が相続人なのかを戸籍で確定します。遺産分割協議や法定相続分で登記する場合は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍謄本(改製原戸籍を含む)が必要です。転籍や結婚で本籍が変わっていると、複数の市区町村から取り寄せることになります。あわせて、相続人それぞれの戸籍謄抄本も集めます。集めた戸籍から相続関係を図にした相続関係説明図を作っておくと、後の申請で戸籍の原本を返してもらう(原本還付)ときに役立ちます。
本人・配偶者・直系尊属(父母など)・直系卑属(子・孫など)の戸籍等は、本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できる場合があります(一部の戸籍を除く)。出典: 法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」。取得日2026-07-23。
STEP3: どのケースで登記するかを決める(遺言・遺産分割協議・法定相続分)
相続登記は、相続のしかたによって必要書類も申請書の書き方も変わります。まず、次のどれにあたるかを確認しましょう。
- 遺言で取得する: 遺言書が必要。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認(法務局保管なら遺言書情報証明書)が必要です。
- 遺産分割協議で分ける: 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要です。
- 法定相続分どおりに登記する: 協議書・印鑑証明書は不要。相続人のうち1名が全員分を申請することもできます。
ケースごとの必要書類の違いは相続登記の必要書類(ケース別一覧)で一覧にしています。出典: 法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」。取得日2026-07-23。
STEP4: 必要書類をそろえる
ケースが決まったら、必要書類をそろえます。どのケースでも共通するのは、被相続人の戸籍・除籍謄本、被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)、相続人の戸籍謄抄本・住民票、そして登記申請をする年度の固定資産課税明細書です。ここに、遺産分割協議なら遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書、遺言なら遺言書が加わります。書類は入手先(市区町村・公証役場・家庭裁判所など)がそれぞれ異なるため、早めに動き始めるとスムーズです。
共通書類・ケース別書類の詳細と入手先は相続登記の必要書類(ケース別一覧)にまとめています。取得日2026-07-23。
STEP5: 登記申請書を作成する
相続登記の登記申請書は、自分で作成します。法務局のホームページでは、法定相続・遺産分割・公正証書遺言・自筆証書遺言など、ケース別の申請書の様式と記載例が公開されています。自分のケースにあった様式をダウンロードし、記載例を見ながら、不動産の表示(地番・家屋番号など)、登記の目的、相続人の情報、登録免許税額などを記入していきます。書き方に迷う点は、法務局の相談窓口(予約制のことがあります)で確認できます。
出典: 法務局「不動産登記の申請書様式について」(相続登記の申請書様式・記載例、登記手続ハンドブック)。取得日2026-07-23。
STEP6: 登録免許税を計算・納付する(税率0.4%)
申請書には、納める登録免許税の額を記載します。相続による土地・建物の所有権移転登記の税率は、固定資産税評価額に対して1,000分の4(0.4%)で、土地・建物とも同じです。計算は、評価額の合計から1,000円未満を切り捨てた課税価格に0.4%をかけ、その税額の100円未満を切り捨てます(1,000円未満なら1,000円)。たとえば評価額の合計が602,850円なら、課税価格602,000円 × 0.4% = 2,408円 → 100円未満を切り捨てて2,400円です。令和9年(2027年)3月31日までに相続で土地の登記を受ける場合で、その価額が100万円以下のときは登録免許税が課されない免税措置もあります(土地のみが対象で建物は対象外・租税特別措置法84条の2の2)。納付は収入印紙などで行います。
評価額から税額の目安をすぐ出したいときは相続登記の登録免許税 計算ツールが便利です。
出典: 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(令和7年4月1日現在法令等)/ 法務局の登録免許税の計算例。取得日2026-07-23。金額は概算・目安で、正確な税額は評価額・免税措置の適用により異なります。相続税がかかりそうかは相続税計算シミュレーターで目安を確認できます。
STEP7: 法務局へ申請する
書類と申請書がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)へ申請します。申請の方法には、窓口へ持参または郵送で提出する書面申請と、オンライン申請があります。不備があると補正(修正)を求められることがあるため、提出前に記載例と照らして確認しておくと安心です。審査が通ると登記が完了し、登記識別情報(いわゆる権利証にあたる情報)などを受け取ります。複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの管轄への申請が必要になることがあります。
出典: 法務局「不動産登記の申請書様式について」(登記申請の方法は書面申請・オンライン申請)。取得日2026-07-23。管轄や受付時間は法務局の案内でご確認ください。
自分でできるケース・専門家に頼んだ方が安心なケース
相続登記は本人でも申請できますが、ケースによって難易度は変わります。目安として整理すると次のとおりです。
| 状況 | 自分で進めやすい | 司法書士への相談が安心 |
|---|---|---|
| 相続人の数 | 少ない(配偶者と子など) | 多い/疎遠な相続人がいる |
| 集める戸籍 | 転籍が少なく範囲が狭い | 転籍が多く範囲が広い |
| 不動産 | 1か所・シンプル | 複数の市区町村・私道や共有持分あり |
| 権利関係 | 名義が被相続人で明確 | 前の代の名義のまま(数次相続)など複雑 |
時間をかけられて書類集めに抵抗がなければ自分で進めやすく、逆に相続人や不動産が複雑なケースでは、登記の専門家である司法書士に依頼すると正確さと手間の面で安心です。どちらを選ぶかは、手間・正確さ・費用のバランスで判断するとよいでしょう。本サイトは登記申請の代行や個別の相談には対応していません。
どの専門家に相談すればよいかは相続は誰に相談する?もあわせてどうぞ。取得日2026-07-23。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月23日):
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」(相続登記の申請書様式・記載例、書面申請/オンライン申請、登記手続ハンドブック)
- 法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(PDF)
- 国税庁 タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表)(相続による所有権移転登記は1,000分の4、令和7年4月1日現在法令等)
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(義務化・3年以内・過料)
よくある質問
- 相続登記は自分でできますか?
- できます。相続登記の申請は相続人本人が行うことができます。法務局は申請書の様式や記載例を公開しており、必要書類をそろえて申請書を作成すれば、専門家に依頼せず自分で申請することが可能です。ただし戸籍の収集範囲が広い場合や相続人が多い場合などは手間がかかるため、負担が大きいと感じるときは司法書士への依頼も選択肢になります。
- 相続登記の申請はどこにすればよいですか?
- 相続登記は、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に申請します。申請の方法には、窓口や郵送で書類を提出する書面申請と、オンライン申請があります。管轄はインターネットや法務局の案内で確認できます。複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの管轄に申請が必要になることがあります。
- 相続登記を自分でやるとき、何から始めればよいですか?
- まず、相続する不動産を正確に把握することから始めます。登記事項証明書や固定資産課税明細書、名寄帳などで、対象の土地・建物や地番・家屋番号を確認します。次に戸籍を集めて相続人を確定し、遺言・遺産分割協議・法定相続分のどれで登記するかを決め、必要書類をそろえて登記申請書を作成し、登録免許税を計算して法務局へ申請します。期限が早い相続税の申告などと並行して進めると安心です。
- 自分でやるのが難しいのはどんなケースですか?
- 相続人が多い、被相続人が何度も転籍していて集める戸籍が多い、不動産が複数の市区町村にある、前の代の名義のままで数次相続になっている、遺言の内容や権利関係が複雑、といったケースは、書類集めや申請書の作成が難しくなりやすいものです。こうした場合は、登記の専門家である司法書士に相談すると、手続きの正確さと手間の面で安心です。
相続では、名義変更(登記)と並行して相続税がいくらかかるかも気になるところです。まずは相続税計算シミュレーターで税額の目安を確認しましょう。ケース別の必要書類は相続登記の必要書類(ケース別一覧)、登記の期限や義務化は相続登記はいつまで?(義務化)、手続き全体の順番は相続手続きの順番もあわせてどうぞ。遺産分割協議で分け方を決める場合は遺産分割協議書とは・書き方や遺産分割協議書を自分で作成する方法もご確認ください。