相続税・贈与税が「いくらか」概算でわかる

最終更新: (民法・最高裁判例・国税庁の公表資料にもとづく)

相続放棄しても生命保険金は受け取れる?——受取人指定と相続税の非課税枠

受取人としてあなたが指定されている生命保険金(死亡保険金)であれば、原則として相続放棄をしても受け取れます。最高裁判所の判例は、受取人が指定された保険金は「受取人固有の財産」で相続財産には属さないと判断しており、被相続人の相続財産を受け継がない相続放棄の影響を受けないと説明されるためです。一方で、相続税では放棄した人に非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えないという注意点があります。「借金は引き継ぎたくない、でも親がかけてくれた保険は受け取れるの?」という方に向けて、受け取れる根拠と税金の扱いを一次情報にもとづいて整理します。

結論——受取人に指定されていれば、放棄しても保険金は受け取れる

相続放棄は、被相続人(亡くなった方)の相続財産——プラスの財産も借金などのマイナスの財産も——を一切受け継がない手続きです(民法939条で「初めから相続人とならなかったものとみなされる」)。ここでポイントになるのが、受取人が指定された生命保険金は「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」だと判例で扱われていることです。相続財産に属さない以上、相続放棄をしてもその受け取りには影響しない、と説明されます。つまり、借金を理由に相続放棄をしても、受取人に指定された保険金は原則として受け取れるのが基本的な考え方です。

出典: e-Gov法令検索「民法」第939条(相続の放棄の効力) / 最判昭和40年2月2日(後述)。取得日2026-07-24。本ページは制度・判例の一般的な情報の解説で、個別の受け取りの可否を判断するものではありません。

なぜ受け取れるのか——最高裁が示した「受取人固有の財産」(最判昭和40年2月2日)

「受取人に指定された保険金は受取人固有の財産で、相続財産に属さない」という考え方は、最高裁判所の判例が根拠です。最判昭和40年2月2日(事件番号 昭和36年(オ)第1028号・事件名「保険金請求」・最高裁判所第三小法廷)は、判決理由の中で次のように判示しています。

「右請求権は、保険契約の効力発生と同時に右相続人の固有財産となり、被保険者(兼保険契約者)の遺産より離脱しているものといわねばならない。」
「……本件保険金請求権が右相続人の固有財産に属し、その相続財産に属するものではない旨判示した原判決の判断は、正当としてこれを肯認し得る。」

この判例は、受取人を「(被保険者の死亡の場合は)その相続人」と抽象的に指定した場合でも、特段の事情がないかぎり、その指定は「保険金請求権発生当時の相続人となるべき人個人を受取人として特に指定した保険契約」と解される、としたうえで、その保険金請求権は保険契約の効力発生と同時に受取人固有の財産となり、被相続人の遺産から離脱していると判断したものです。特定の人(配偶者・子など)を受取人に指定した場合はもちろん、受取人が「相続人」と指定されている場合でも、この考え方にもとづいて受取人固有の財産と扱われると説明されます。

出典: 裁判所 裁判例検索 最判昭和40年2月2日(昭和36年(オ)第1028号)全文。判決全文(PDF・courts.go.jp)。取得日2026-07-24。引用は判決理由の該当部分の抜粋です。個別の事案へのあてはめは事情により異なります。

注意——受取人が「被相続人本人」や「指定なし」のときは扱いが違う場合がある

上の判例は「特段の事情のないかぎり」と留保をつけており、すべての保険契約に一律で当てはまるわけではありません。とくに次のようなケースでは、保険金が受取人固有の財産といえるかどうかの判断が分かれることがあり、本サイトでは受け取れると断定できません

保険証券や約款で受取人が誰に指定されているかをまず確認し、判断に迷うときは、放棄との関係は弁護士・司法書士に、税金の扱いは税理士・税務署にご確認ください。

出典: 最判昭和40年2月2日(前掲・「特段の事情のないかぎり」の留保)。取得日2026-07-24。個別の受け取りの可否・税務上の扱いはお示しできません。

税金——保険金は受け取れても、放棄した人には非課税枠が使えない

保険金を「受け取れるか」と「相続税がかかるか」は別の話です。死亡保険金は、保険料を被相続人が負担していた場合、相続税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります(国税庁No.4114)。ここで気をつけたいのが、相続放棄をした人は、生命保険金の非課税枠が使えないという点です。

論点 扱い(国税庁の公表資料)
死亡保険金の課税保険料を被相続人が負担していた場合、みなし相続財産として相続税の課税対象(No.4114)
非課税枠「500万円×法定相続人の数」。相続人が受け取った場合のみ適用(No.4114)
放棄した人が受け取った保険金非課税枠は適用されない(相続人以外が取得した保険金も同様。No.4114)
非課税枠を計算する人数「法定相続人の数」は放棄がなかったものとして数える(放棄した人も人数に含める。No.4114・No.4117)

整理すると、放棄した人でも受取人に指定されていれば保険金そのものは受け取れますが、その保険金に非課税枠(500万円×法定相続人の数)は使えず、金額に応じて相続税の課税対象になりえます。一方で、非課税枠を計算するときの人数は放棄があっても減らないため、他の相続人が受け取る保険金の非課税枠には影響しません。相続税がかかりそうかどうかの目安は、まず相続税計算シミュレーターで概算を確認できます(税額の目安は概算です)。

出典: 国税庁 No.4114(相続税がかかる財産・死亡保険金)・No.4117(死亡退職金)。取得日2026-07-24。非課税枠のしくみは死亡保険金の非課税枠、生命保険と相続税の全体像は生命保険と相続税で解説しています。具体的な税額は税理士・税務署にご確認ください。

死亡退職金も同じ考え方——受け取れても非課税枠は放棄者に使えない

勤務先から支給される死亡退職金も、死亡後3年以内に支給が確定したものは相続税法上「みなし相続財産」として課税対象になり、生命保険金と同じく「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(国税庁No.4117)。この非課税枠も、相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った場合には適用されません。受け取れるかどうかは勤務先の退職金規程などによって異なることがあるため、勤務先や税理士・税務署にご確認ください。

出典: 国税庁 No.4117(死亡退職金)。取得日2026-07-24。

📋 配偶者・子・親・兄弟…続柄を選ぶだけで、相続放棄の申述に必要な書類の目安がわかる → 相続放棄の必要書類チェック

よくある質問(FAQ)

相続放棄をしても生命保険金は受け取れますか?
受取人としてあなたが指定されている生命保険金(死亡保険金)であれば、原則として相続放棄をしても受け取れます。最高裁判所の判例(最判昭和40年2月2日)は、受取人が指定された保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に受取人固有の財産となり、被相続人の遺産から離脱していて相続財産には属さない、と判断しています。相続放棄は被相続人の相続財産を受け継がない手続きなので、相続財産に属さない保険金は放棄の影響を受けないと説明されています。ただし受取人が「被相続人本人」のときや受取人の指定がないときは扱いが異なる場合があるため、契約内容を確認し、迷う場合は弁護士・税理士にご確認ください。
相続放棄して生命保険金を受け取ると相続税はかかりますか?
死亡保険金は、保険料を被相続人が負担していた場合、相続税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります(国税庁No.4114)。生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが、この非課税枠は相続人が受け取った場合にだけ適用され、相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った保険金には適用されません。つまり保険金そのものは受け取れても、放棄した人は非課税枠を使えない点に注意が必要です。具体的な税額は税理士・税務署にご確認ください。
相続放棄した人がいると保険金の非課税枠の人数は減りますか?
減りません。非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数えます(国税庁No.4114・No.4117)。したがって誰かが放棄しても、非課税枠の計算に使う人数は変わりません。ただし放棄した人自身が受け取った保険金には非課税枠が適用されない点は別の話です。
死亡退職金も生命保険金と同じ扱いですか?
死亡退職金も、死亡後3年以内に支給が確定したものは相続税法上「みなし相続財産」として課税対象になり、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(国税庁No.4117)。この非課税枠も相続を放棄した人や相続人以外の人が受け取った場合には適用されません。受け取れるかどうかや税務上の扱いは、勤務先の規程や契約内容によって異なることがあるため、税理士・税務署にご確認ください。

一次情報(出典)

出典(取得日 2026年7月24日):

相続放棄の全体像(効果・熟慮期間・注意点)は相続放棄とは?、申述の進め方は相続放棄の手続き・やり方で解説しています。生命保険金の非課税枠のしくみは死亡保険金の非課税枠、相続税がかかりそうかどうかの目安は相続税計算シミュレーターで確認できます。

本ページは、民法・最高裁判例および国税庁が公表する資料にもとづく、相続放棄と生命保険金・死亡退職金に関する一般的な情報の解説です。保険金を受け取れるかどうかや相続税の扱いは、受取人の指定内容・保険料の負担者・家族関係によって異なり、判例の「特段の事情」にあたるかどうかも個別の判断を要します。本サイトは一般的な制度・判例の解説と概算計算であり、相続放棄の手続き代行や個別の法律相談・法律事務の代理、個別の税務相談には対応していません。放棄との関係は家庭裁判所・弁護士・司法書士へ、相続税に関する具体的な判断は税理士・税務署にご相談ください。
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