最終更新: (民法・裁判所の公表資料にもとづく)
相続放棄はいつまで?——3か月の熟慮期間・起算日と注意点
相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。この期間を「熟慮期間」といい、この間に相続放棄・限定承認・単純承認のいずれかを選びます(民法915条)。起算点は「亡くなった日」ではなく「自分が相続人になったことを知った時」である点が大切です。ここでは期限の数え方と、放棄を考えるときに知っておきたい一般的な注意点を整理します。
期限は「知った時から3か月以内」
民法915条では、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選ぶこととされています。相続放棄をする場合は、この3か月の熟慮期間内に家庭裁判所へ申述する必要があります。何もしないまま3か月が過ぎると、原則として単純承認(財産も借金もそのまま引き継ぐ)をしたものとして扱われます。
出典: e-Gov法令検索「民法」第915条 / 裁判所「相続の放棄の申述」。取得日2026-07-22。
起算日は「亡くなった日」ではなく「知った時」
3か月の数え方でつまずきやすいのが起算日です。期限は亡くなった日からではなく、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から数えます。通常は、被相続人が亡くなって自分が相続人になったことを知った時が起算点です。一方で、先順位の相続人が全員放棄したことで、あとから自分が相続人になったことを知ったようなケースでは、その事実を知った時から3か月と考えられます。起算日をいつと見るかは個別の事情で変わるため、判断に迷う場合は家庭裁判所や弁護士・司法書士に確認しましょう。
上記は一般的な考え方の説明です。具体的な起算日の判断は事情により異なります。出典: 民法第915条。取得日2026-07-22。
3か月で決められないとき——期間伸長の申立て
財産や借金の全体像が3か月では把握しきれないこともあります。その場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てて、熟慮期間を延ばせる場合があります。申立ては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ行います。認められるかどうかは家庭裁判所の判断によります。期限が近づいてから慌てないよう、調査に時間がかかりそうなときは早めに検討するとよいでしょう。
出典: 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」。取得日2026-07-22。
注意:遺産に手をつけると放棄できなくなることがある
相続放棄を考えているときに気をつけたいのが、相続財産の処分です。民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、原則として単純承認したもの(=相続を受け入れたもの)とみなすとされています。たとえば、故人の預貯金を引き出して使う、遺産を売却する、といった行為が該当し得ます。こうした行為をしたあとでは、相続放棄が認められなくなることがあります。放棄を検討しているあいだは、遺産に手をつけないのが安全です。何が「処分」にあたるか判断に迷う場合は、行動する前に弁護士・司法書士に確認してください。
出典: e-Gov法令検索「民法」第921条(法定単純承認)。取得日2026-07-22。ここでは制度の一般的な考え方のみを示しています。
家庭裁判所への申述の流れ(一般的な情報)
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出して行います。裁判所の公表資料によると、申述に必要な費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なる)です。必要書類は、申述書のほか、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本などで、相続人の順位に応じて追加の戸籍が必要になります。申述が受理されると、家庭裁判所から照会や受理の通知が届きます。手続きは本人でも行えますが、書類の準備や個別の判断に不安があるときは、専門家(弁護士・司法書士)に相談できます。
費用・書類は裁判所や事情により異なるため、申述先の家庭裁判所で必ずご確認ください。出典: 裁判所「相続の放棄の申述」。取得日2026-07-22。
迷ったときの考え方
相続放棄をするかどうかは、プラスの財産とマイナスの財産(借金・保証債務など)のバランス、他の相続人との関係など、さまざまな事情で変わります。本サイトは「放棄すべき」「相続すべき」といった個別の判断はお示しできません。判断のためには、まず財産と借金の全体像を把握することが出発点になります。相続税がかかりそうかどうかは相続税計算シミュレーターで目安を確認できますが、放棄そのものの可否・進め方は法律の問題です。期限(3か月)が迫っている、借金が多そう、起算日の判断が難しい、といった場合は、早めに弁護士・司法書士や家庭裁判所へ相談してください。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月22日):
- e-Gov法令検索「民法」第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)・第921条(法定単純承認)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(申述期間・申述先・費用・必要書類)
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」(熟慮期間の伸長)
よくある質問
- 相続放棄はいつまでにすればいいですか?
- 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。この期間を「熟慮期間」といい、この間に相続放棄・限定承認・単純承認のいずれかを選びます(民法915条)。相続放棄をする場合は、この3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。期限の起算点は「亡くなった日」ではなく「自分が相続人になったことを知った時」である点がポイントです。
- 3か月の起算日はいつからですか?
- 「自己のために相続の開始があったことを知った時」からです。通常は被相続人が亡くなり、自分が相続人になったことを知った時が起算点になります。たとえば先順位の相続人が全員放棄したことで、あとから自分が相続人になったことを知ったようなケースでは、その事実を知った時から3か月と考えられます。個別の起算日の判断は事情によって変わるため、迷う場合は家庭裁判所や弁護士・司法書士にご確認ください。
- 3か月では決められないときはどうすればいいですか?
- 財産や借金の全体像が3か月で把握しきれないときは、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てて、熟慮期間を延ばせる場合があります。申立ては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。認められるかどうかは家庭裁判所の判断によります。
- 遺産に手をつけると相続放棄できなくなりますか?
- 相続財産の全部または一部を処分すると、原則として相続を承認したもの(単純承認)とみなされ、その後は相続放棄ができなくなることがあります(民法921条)。預貯金を引き出して使う、遺産を売却する、といった行為が該当し得ます。放棄を検討しているうちは遺産に手をつけない方が安全です。判断に迷う行為があるときは、事前に弁護士・司法書士にご確認ください。
相続放棄は死亡後の手続き全体の中では「3か月以内」に位置づけられます。手続き全体の流れと期限は相続手続きの順番(死亡後にやること・期限一覧)で、相続税の申告期限(10か月)は相続税の申告期限で解説しています。相続税がかかりそうかどうかの目安は相続税計算シミュレーターで確認できます。不動産を引き継ぐ場合は相続登記の義務化もあわせてどうぞ。