最終更新: (民法・裁判所の公表資料にもとづく)
相続放棄が「できない・認められない」のはどんなとき?——単純承認とみなされる行為
相続放棄が「できない・認められない」主な原因は、民法921条の「法定単純承認」です。①遺産を処分した、②3か月の熟慮期間が過ぎた、③放棄した後に財産を隠した・使った——このいずれかがあると、相続を受け入れた(単純承認した)ものとみなされ、放棄できなくなることがあります。判断に迷う行為は動く前に弁護士・司法書士へ。ここでは「やってはいけないこと」を一般的な情報として整理します。
「できない・認められない」には2つの意味がある
相続放棄が「できない」と言われる場面には、大きく2つあります。ひとつは、自分の行動によって民法921条の「法定単純承認」にあたり、放棄する資格を失ってしまうケース。もうひとつは、家庭裁判所に申述したものの受理されないケースです。実務で多く問題になるのは前者で、知らずに遺産に手をつけてしまった、期限を過ぎてしまった、というパターンです。以下では、まず法定単純承認の3つの類型を見ていきます。
出典: e-Gov法令検索「民法」第921条(法定単純承認) / 裁判所「相続の放棄の申述」。取得日2026-07-24。
① 遺産を「処分」すると放棄できなくなる(921条1号)
民法921条1号では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすとされています。故人の預貯金を引き出して自分のために使う、遺産を売却する、といった行為が該当し得ます。ただし条文にはただし書があり、「保存行為」と、民法602条に定める期間を超えない賃貸は処分にあたらないとされています。
注意したいのは、具体的な行為が「処分」にあたるかどうかは事情によって判断が分かれることがある点です。本サイトでは、個別の行為が処分にあたるかどうかを断定できません。放棄を検討しているあいだは、遺産に手をつけないのが安全です。判断に迷う行為があるときは、行動する前に弁護士・司法書士に確認してください。
出典: e-Gov法令検索「民法」第921条第1号。取得日2026-07-24。ここでは制度の一般的な考え方のみを示しています。
② 3か月の熟慮期間が過ぎた(921条2号)
民法921条2号では、相続人が民法915条1項の期間内(自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内)に、限定承認も相続放棄もしなかったときは、単純承認をしたものとみなすとされています。つまり、何もしないまま熟慮期間が過ぎると、原則として相続を受け入れたことになり、その後は放棄できなくなります。財産や借金の全体像が3か月で把握しきれないときは、期間の伸長を申し立てられる場合があります。期限の数え方や伸長については、期限の解説ページをご覧ください。
出典: e-Gov法令検索「民法」第921条第2号・第915条。取得日2026-07-24。
③ 放棄した後に財産を隠す・使う(921条3号)
民法921条3号では、相続放棄などをした後であっても、相続人が相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、ひそかに消費し、または悪意で相続財産の目録に記載しなかったときは、単純承認をしたものとみなすとされています。「放棄が済んだから」と遺産を勝手に使ったり隠したりすると、放棄の効力に影響し得るということです。なお条文にはただし書があり、その放棄によって相続人となった人が相続を承認した後は、この限りでないとされています。
出典: e-Gov法令検索「民法」第921条第3号。取得日2026-07-24。個別事案が該当するかの判断はしていません。
判断が分かれやすい「グレー」な行為(形見分け・葬儀費用・遺品整理など)
よくある疑問が、葬儀費用を故人の口座から支払う、遺品整理をする、形見分けをするといった行為が921条の「処分」にあたるのか、という点です。これらが放棄に影響するかどうかは、金額・内容・状況によって判断が分かれ得る、一般に議論のある論点です。本サイトでは、こうしたグレーな行為が放棄に影響するかどうかを断定できません。
大切なのは、後で「単純承認」とみなされるリスクを避けることです。相続放棄を検討しているときに、故人の財産に関わる支払いや処分をする必要がある場合は、行動する前に弁護士・司法書士に確認するのが安全です。すでに何かに手をつけてしまった場合も、自己判断で進めず、早めに専門家に相談してください。
上記は一般的な注意点の説明で、具体的な行為の可否を判断するものではありません。
申述が受理されない・却下される場合について
家庭裁判所に相続放棄を申述しても、常に自動で受理されるわけではありません。裁判所の公表資料には、「実際に申述を受けた家庭裁判所では、判断するためにさらに書面で照会したり、直接事情をおたずねする場合があります。裁判所からの照会や呼出しには必ず応じるようにしてください」と記載されています。照会や呼出しに応じないと、手続きが不利に進むおそれがあります。個別のケースで受理されるかどうかの基準は、本サイトでは断定できません。書類の準備や家庭裁判所とのやり取りに不安があるときは、放棄の申述書類の作成は司法書士、代理や相談全般は弁護士に相談できます。
出典: 裁判所「相続の放棄の申述」(申述の受理・照会に関する案内)。取得日2026-07-24。
一度した放棄は「やり直せない」——撤回できない(919条)
相続放棄は、いったん受理されると原則として撤回できません。民法919条1項は、相続の承認および放棄は、3か月の熟慮期間内であっても撤回することができないと定めています。「やっぱり相続したい」と後から気持ちが変わっても、放棄をなかったことにはできないのが原則です。ただし、詐欺や強迫によって放棄させられた場合など、民法総則や親族編の規定による取消しは別に認められる余地があり、その場合も家庭裁判所への申述が必要です。取消しができる期間にも制限があります。事情がある場合は、自己判断せず早めに弁護士にご相談ください。
出典: e-Gov法令検索「民法」第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)。取得日2026-07-24。取消しの可否は個別事情によります。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月24日):
よくある質問
- どんなことをすると相続放棄ができなくなりますか?
- 民法921条では、次の場合に単純承認をしたものとみなされ、原則として相続放棄ができなくなります。(1)相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為や短期の賃貸は除く)、(2)自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の期間内に限定承認または相続放棄をしなかったとき、(3)相続放棄などをした後でも、相続財産を隠したり、ひそかに消費したり、悪意で財産目録に記載しなかったとき。これらを「法定単純承認」といいます。個別の行為が該当するかは事情により判断が分かれるため、迷う場合は弁護士・司法書士にご確認ください。
- 遺産の預貯金を使ってしまいました。もう相続放棄はできませんか?
- 相続財産の全部または一部を処分すると、原則として単純承認をしたものとみなされ(民法921条1号)、その後は相続放棄が認められなくなることがあります。故人の預貯金を引き出して自分のために使う、遺産を売却する、といった行為が該当し得ます。ただし、具体的な行為が「処分」にあたるかどうかは事情によって判断が分かれることがあり、本サイトでは可否を断定できません。すでに手をつけてしまった場合や、これから必要な支払いがある場合は、動く前に弁護士・司法書士にご相談ください。
- 葬儀費用を故人の口座から支払うと相続放棄できなくなりますか?
- 葬儀費用の支払い、遺品整理、形見分けなどが民法921条の「処分」にあたるかどうかは、金額・内容・状況によって判断が分かれ得る論点で、一般に議論のあるテーマです。本サイトでは、これらが放棄に影響するかどうかを断定できません。相続放棄を検討しているときに故人の財産に関わる支払いや処分をする場合は、後で「単純承認」とみなされるリスクを避けるため、行動する前に弁護士・司法書士に確認することをおすすめします。
- 一度した相続放棄を取り消したり撤回したりできますか?
- 民法919条1項では、相続の承認および放棄は、3か月の熟慮期間内であっても撤回することができないとされています。いったん受理された放棄を「やっぱりやめる」ことは原則できません。ただし、詐欺や強迫によって放棄させられた場合など、民法総則や親族編の規定による取消しは別に認められる余地があり、その場合も家庭裁判所への申述が必要です。取消しができる期間にも制限があるため、事情がある場合は早めに弁護士にご相談ください。
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