最終更新: (国税庁No.4124に基づく)
小規模宅地等の特例の要件——配偶者・同居親族・家なき子をわかりやすく
自宅の土地(特定居住用宅地等)で小規模宅地等の特例を使えるかどうかは、「誰がその土地を相続したか」で変わります。配偶者は追加要件なし、同居していた親族は「居住と保有の継続」、別居の親族(いわゆる家なき子)は「6つの要件すべて」が必要です(国税庁No.4124)。ここでは取得者別の要件を、条文の文言にそって整理します。当てはまるかどうかの判定は行わず、確認のポイントをまとめます。
まず全体像——取得者で要件が3つに分かれる
特定居住用宅地等(自宅の土地)の要件は、取得した人によって次の3パターンに分かれます。減額の割合(330㎡まで80%)は共通ですが、そもそも適用できるかどうかの入口が取得者ごとに違うのがポイントです。
| 取得者 | 主な要件 |
|---|---|
| 配偶者 | 取得者ごとの追加要件なし(取得するだけで対象) |
| 同居していた親族 | 申告期限まで、引き続き居住+その宅地を保有 |
| 別居の親族(家なき子) | 6つの要件をすべて満たすこと |
出典: 国税庁 No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」(特定居住用宅地等の取得者別の要件)。取得日2026-07-22。
配偶者が取得する場合——追加要件はなし
被相続人の配偶者が自宅の土地を取得する場合、取得者ごとの追加要件はありません。相続開始後にすぐ売却したり、居住を続けなかったりしても、この点についての適用制限はありません。もっとも、その宅地が「被相続人などの居住の用に供されていた宅地等」にあたることなど、大前提となる条件は必要です。
出典: 国税庁 No.4124(配偶者)。取得日2026-07-22。
同居していた親族が取得する場合——「居住」と「保有」の継続
被相続人と同居していた親族(被相続人が住んでいた一棟の建物に居住していた親族)が取得する場合は、次の2つを相続税の申告期限まで続けることが必要です。
①居住の継続:相続開始の直前から相続税の申告期限まで、引き続きその建物に住んでいること。
②保有の継続:その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで保有していること。
つまり、申告期限を待たずに引っ越したり、その土地を売ってしまったりすると、要件を満たさなくなる可能性があります。相続税の申告期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
出典: 国税庁 No.4124(同居親族の要件)。取得日2026-07-22。
別居の親族(家なき子)——6つの要件をすべて満たすこと
被相続人と同居していなかった別居の親族でも、被相続人に配偶者や同居の相続人がいないなどの一定の場合には、特定居住用宅地等の特例を受けられることがあります。これがいわゆる「家なき子」です。ただし対象になるのは、次の⑴〜⑹の要件をすべて満たす場合に限られます(国税庁No.4124/「相続税の申告のしかた」より)。
⑴ 居住制限納税義務者又は非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
⑵ 被相続人に配偶者がいないこと。
⑶ 相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと。
⑷ 相続開始前3年以内に、日本国内にある取得者・取得者の配偶者・取得者の三親等内の親族・取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと。
⑸ 相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
⑹ その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。
⑷の「3年以内に持ち家に住んでいないか」や、⑶の「同居の相続人がいないか」は、実際の居住実態や家屋の所有関係を細かく確認する必要があり、判断が難しい部分です。これらの該当性の判定は税理士の領域です。要件の文言そのものは国税庁No.4124でも確認できます。
出典: 国税庁 No.4124/「相続税の申告のしかた」(特定居住用宅地等の要件・区分①3)。取得日2026-07-22。
自分は当てはまる?——確認のためのチェック(判定はしません)
下のチェックは、ご自身の状況を整理するための確認用です。当サイトは、特定の方が要件に当てはまるかどうかの判定は行いません。「すべてに当てはまりそう」でも、居住や保有の実態、持ち家の判定などは個別の事情で結論が変わります。最終的な適用の可否は、必ず税理士にご確認ください。
配偶者が取得する → 取得者ごとの追加要件は問われません。
同居していた親族が取得する → 申告期限まで「居住」と「保有」を続けられそうか。
別居の親族が取得する → 家なき子の⑴〜⑹を「すべて」満たしそうか(一つでも外れると対象外)。
なお、これらは「特定居住用宅地等(自宅の土地)」の要件です。事業用の土地(特定事業用等宅地等)や貸付用の土地(貸付事業用宅地等)には、それぞれ別の要件(事業の継続・保有の継続など)があります。
判断が分かれやすい論点——個別に確認が必要なケース
次のようなケースは、要件の当てはめが特に難しく、個別の事情で結論が変わるため、一般的な解説だけで判断するのは危険です。当てはまる可能性があるときは、国税庁No.4124を確認のうえ、税理士にご相談ください。
- 二世帯住宅:建物の構造(内部で行き来できるか)や登記(区分所有登記かどうか)によって、同居とみなせるかの取り扱いが変わります。
- 老人ホームなどに入所していた場合:被相続人が亡くなる前に施設へ入所していたとき、入所の理由や入所後の家屋の使われ方によって、居住用と認められるかが変わります。
- 申告期限までに遺産分割が終わっていない(未分割の)土地:原則として、その時点では特例を適用できません(所定の手続きで後から適用できる場合があります)。
- 複数の宅地を組み合わせて使う(併用)場合:限度面積の調整(貸付事業用があるときは200㎡への換算)が必要になります。
これらの取り扱いには個別の要件・例外があります。当サイトでは詳細な要件の当てはめは行いません。出典: 国税庁 No.4124。取得日2026-07-22。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月22日):
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) — 特定居住用宅地等の取得者別の要件(配偶者・同居親族・家なき子6要件)、二世帯住宅・老人ホーム入所・未分割の取り扱い
- 国税庁「相続税の申告のしかた」(特定居住用宅地等の要件・区分の逐語) — 家なき子6要件の文言
よくある質問
- 小規模宅地等の特例(特定居住用)は誰が使えますか?
- 特定居住用宅地等では、取得者によって要件が異なります。被相続人の配偶者は取得者ごとの追加要件はありません(取得するだけで対象)。被相続人と同居していた親族は、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地を申告期限まで保有していることが必要です。別居していた親族(いわゆる家なき子)は、6つの要件をすべて満たす場合に限られます(国税庁No.4124)。
- 「家なき子」の要件とは何ですか?
- 家なき子とは、被相続人と同居していなかった別居の親族が特定居住用宅地等の特例を受けられる場合の通称です。国税庁No.4124では、(1)日本国籍を有しない一定の者でないこと、(2)被相続人に配偶者がいないこと、(3)相続開始の直前に被相続人の家屋に同居していた相続人がいないこと、(4)相続開始前3年以内に自己・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと、(5)相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないこと、(6)その宅地を申告期限まで保有すること、の6要件すべてを満たすことが求められます。
- 自分が小規模宅地等の特例の要件に当てはまるか判定してもらえますか?
- 本サイトでは、特定の方が要件に当てはまるかどうかの判定は行っていません。小規模宅地等の特例の要件は、居住・保有の継続の実態、家なき子の3年以内の居住や持ち家の判定、二世帯住宅や老人ホーム入所の取り扱いなど、個別の事情で結論が大きく変わります。適用の可否は税理士または所轄の税務署にご確認ください。本記事は要件を確認するための一般的な整理です。
- 二世帯住宅や老人ホームに入所していた場合も特例は使えますか?
- 二世帯住宅(構造上分離した建物を含む)や、被相続人が老人ホームなどに入所していた場合の取り扱いには、それぞれ個別の要件・例外が定められています。当てはまるかどうかは、建物の登記の状況や入所の理由、入所後の家屋の使われ方などの具体的な事情によって変わります。これらは判断が分かれやすい論点のため、国税庁No.4124を確認のうえ、必ず税理士にご相談ください。
制度の全体像(3類型・減額割合・計算例)は小規模宅地等の特例とはで、減額後の評価額の目安は小規模宅地等の特例 減額計算で確認できます。評価額のもとになる路線価の調べ方は相続税の土地の評価とはで、誰に相談すればよいか迷うときは相続は誰に相談する?で解説しています。