最終更新: (国税庁の公表資料にもとづく)
相続税の税務調査——どんな調査?件数・追徴税額を国税庁の統計で解説
相続税の申告をしたあと、「税務調査が来たらどうしよう」と不安になる方は少なくありません。まず落ち着いて事実を確認しましょう。相続税の税務調査は、申告内容が正しいかを税務署が確認する手続きです。国税庁は毎年、調査の件数や追徴税額などの統計を公表しています。この記事では、国税庁が公表した令和6事務年度(令和7年12月公表)の数字をそのまま引用しながら、「どんな調査で、どんな財産の申告漏れが多いのか」を整理します。大切なのは、調査を恐れることではなく、財産を正しく把握して正確に申告することです。
相続税の税務調査とは——「実地調査」と「簡易な接触」
相続税の税務調査には、大きく2つの形があります。1つは、税務署の職員が自宅などを訪ねて申告内容を詳しく確認する実地調査。もう1つは、文書や電話、来署依頼による面接で、申告漏れや計算誤りを是正する簡易な接触です。国税庁は、実地調査について「資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について実施した」と説明しています。つまり、何らかの資料から「申告額が少なそう」「申告が必要なのにしていないのでは」と見込まれるケースが対象とされています。
出典: 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表)。取得日2026-07-23。
数字で見る相続税の税務調査(令和6事務年度)
国税庁が公表した令和6事務年度の相続税の調査等の状況から、主な数字を抜き出したものが下の表です。件数・金額はいずれも公表資料の数値をそのまま記載しています。
| 項目 | 実地調査 | 簡易な接触 |
|---|---|---|
| 件数 | 9,512件 | 21,969件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 7,826件(非違割合82.3%) | 5,796件 |
| 追徴税額(合計) | 824億円 | 138億円 |
| 1件あたり追徴税額 | 867万円 | 63万円 |
| 1件あたり申告漏れ課税価格 | 3,093万円 | 511万円 |
実地調査では、9,512件のうち82.3%にあたる7,826件で申告漏れなどの非違が見つかり、そのうち1,065件で重加算税が課されました。実地調査1件あたりの追徴税額は平均867万円です。また、無申告(申告が必要なのにしていなかった)事案に対する実地調査は650件行われ、追徴税額は142億円でした。これらはあくまで全体の統計・平均であり、個別のケースで実際にどうなるかを示すものではありません。
出典: 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表)Ⅰ・Ⅱ。数値は公表資料のとおり。取得日2026-07-23。
申告漏れで多いのは「現金・預貯金等」——名義預金・タンス預金に注意
国税庁の公表資料によると、申告漏れが指摘された相続財産のうち、金額で最も大きいのは現金・預貯金等です。土地や有価証券よりも、現金・預貯金の申告漏れが目立つという傾向が続いています。国税庁が公表した調査事例でも、次のようなケースが取り上げられています。
- 自宅で保管していた現金(いわゆるタンス預金)の申告漏れ: 亡くなる前に口座から引き出した多額の現金を相続人の自宅で保管し、申告から除外していた事例。増差課税価格は約2億5千万円、追徴税額は約1億2千万円(重加算税あり)とされています。
- 家族名義の口座への預金移動: 亡くなる前に、口座残高が相続税の基礎控除以下になるよう、相続人やその家族の名義の口座へ預金を移していた無申告の事例。
ここで重要なのが名義預金という考え方です。口座の名義が配偶者や子どもであっても、そのお金の出どころ(原資)が亡くなった方で、実質的に本人が管理していた預金は、相続財産として扱われます。「家族の名義だから相続財産ではない」と考えて申告から外すと、申告漏れを指摘される原因になります。名義預金は、隠すためのものでも、時間の経過で相続財産から外れるものでもありません。
名義預金の判定と正しい取り扱いは名義預金とは(相続税の課税対象になる理由)と名義預金の解消方法・時効の考え方で詳しく解説しています。出典: 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」Ⅲ・Ⅳ(申告漏れ相続財産の構成比・調査事例)。取得日2026-07-23。
「調査を避ける」より「正しく申告する」——不安なときの進め方
統計を見ると不安になるかもしれませんが、調査で指摘されるのは、基本的に申告すべき財産が申告に反映されていなかったケースです。裏を返せば、財産を正しく把握して正確に申告することが、いちばんの備えになります。とくに次の点は、家族が見落としやすいポイントです。
- 家族名義でも、実質は亡くなった方の預金だったもの(名義預金)
- 亡くなる前に引き出して手元に置いていた現金
- 亡くなる直前の生前贈与など、相続税の計算に加算されるもの
財産の評価や申告に不安があるときは、早めに税理士や税務署に相談しましょう。相続税がかかりそうかどうかを大まかに知りたい段階では、まず相続税計算シミュレーターで概算を確認し、そのうえで専門家に相談すると話が早く進みます。なお、本記事は税務調査への対応方法を個別に助言するものではなく、調査を避けるための手法を紹介するものでもありません。
相続税がかかる目安(基礎控除)は相続税の基礎控除、申告の期限は相続税の申告期限(10か月)で解説しています。取得日2026-07-23。
まずは相続税計算シミュレーターで、相続税がかかりそうかの目安を確認しましょう。申告漏れで指摘されやすい名義預金の考え方、相続税の基礎控除、申告期限(10か月)もあわせてご覧ください。
一次情報(出典)
出典(取得日 2026年7月23日):
- 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表。実地調査9,512件・非違7,826件・非違割合82.3%・重加算税賦課1,065件・追徴税額合計824億円・1件あたり追徴867万円/申告漏れ課税価格3,093万円、簡易な接触21,969件・追徴138億円、無申告事案650件・追徴142億円、申告漏れ相続財産の構成比、調査事例)
よくある質問
- 相続税の税務調査とは何ですか?
- 相続税の申告内容が正しいかを税務署が確認する手続きです。国税庁によると、資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について、実地調査が行われます。実際に税務署の職員が自宅などを訪ねて行う「実地調査」と、文書や電話・来署依頼による「簡易な接触」があります。令和6事務年度の実地調査件数は9,512件でした(国税庁公表)。
- 相続税の税務調査で、どのくらい追徴されるのですか?
- 国税庁が公表した令和6事務年度の相続税の実地調査では、追徴税額の合計は824億円で、実地調査1件あたりの追徴税額は平均867万円でした。実地調査9,512件のうち申告漏れ等の非違があったのは7,826件(非違割合82.3%)で、うち重加算税が課されたのは1,065件です。これらは全体の平均値であり、個別のケースで実際にいくらになるかを示すものではありません。
- 相続税の税務調査で、どんな財産の申告漏れが多いのですか?
- 国税庁の公表資料では、申告漏れが指摘された相続財産のうち、金額で最も大きいのは現金・預貯金等です。実際の調査事例でも、亡くなる前に引き出して自宅で保管していた現金や、家族名義の口座に移していた預金が申告から漏れていたケースが取り上げられています。名義は家族でも、実質的に亡くなった方の財産(名義預金)であれば相続財産に含めて申告する必要があります。
- 相続税の申告を自分でやると調査されやすいですか?
- 自分で申告したこと自体が調査の対象を決めるという公表データはありません。調査は、資料情報等から申告額が過少・無申告と想定される事案について行われるとされています。大切なのは、名義預金や生前に引き出した現金なども含めて財産を正しく把握し、正確に申告することです。財産の評価や申告に不安があるときは、税理士や税務署に相談してください。